避難・移住・帰還の権利ネットワーク

2012年6月に国会で成立した「原発被災者支援法」に基づき、被災者・避難者の権利を実現するためのネットワークです。

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【東京電力の責任は、どのように規定されているのか?】

【東京電力の責任は、どのように規定されているのか?】

 前回まで、国は「放射能汚染があっても放射能による健康被害はない(出ていない)」という立場であることを紹介しました。

 より正確には、被災者支援法を含めて国の文書には、避難地域以外の地域に係わって「健康被害」という言葉はなく、「健康上の不安」という文言が常に用いられます。

 2月13日、福島県は県内の子ども3人に甲状腺がんが見つかり、7人にその強い疑いがあると公表しました。しかし山下俊一や福島医大の学者らは、これらの症例は「原発事故の影響とは考えにくい」と言って因果関係を否定しました。つまり甲状腺がんが発症しても放射能の影響ではないから国にも東電にも責任はない。これが彼らの結論です。
 
 一方で福島県は18才以下の県民の医療費を無償化しました。だから甲状腺がんの手術や治療費は,責任がないはずの福島県が出す。結局「実害」はないから誰の責任も問われない。表面に出てこない。

 こんな非常識なことが制度化されているのですが、実態はなかなか見えにくいです。

【東電がやっている損害賠償】
 一方で東京電力は、避難者と一部の「自主」避難者、農民、事業者などに損害賠償を行っています。その根拠は福島原発事故の「原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」とその「追補」です。東電にとっては国に指示された賠償命令です。これを読むと、三たび腹が立ってきます。

 詳しい内容は、こちらを読んでください。
・ 「中間指針」(2011/8/5)
→http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2011/08/17/1309452_1_2.pdf
・ 「追補」(2011/12/6) 
→ http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/kaihatu/016/houkoku/__icsFiles/afieldfile/2012/01/18/1315180_1.pdf

「中間指針」は主に、①避難地域の避難者の損害、②(強制)出荷停止された農林水産物など、③風評被害、④放射線被曝について、またこれ以外の損害の定義(賠償範囲)と賠償金額の考え方を示します。

「追補」はだいぶ遅れて発表され、⑤「自主」避難者の損害について述べています。

【①避難地域の避難者の損害】
 大雑把に言うと、「避難地域」とは以下の地域です。
・ 第1原発から20キロ以内の「警戒区域」(立ち入り禁止)。
・ 20~30キロ内のうち年間20ミリSv以上になりそうな「計画的避難区域」(1ヶ月以内の避難を指示)。
・ 20~30キロ内のうち「計画的避難区域」以外の所(ここは子どもと妊婦などに避難指示、それ以外の住民には「自主避難(?)」を呼びかけた:「緊急時避難準備区域」。ただし一部地域を除く)。
・ 「警戒区域」「計画的避難区域」の外でも年間20ミリSvを超えそうな地点(いわゆるホットスポット:「特定避難勧奨地点」 伊達市、南相馬市、川内村の数百世帯。)

★検査費用
これらの避難地域にいた人に、放射能の健康被害に係わる損害として認められたのは、「検査費用」だけ。「検査費用」にはこんな解説がついています。

→ 「・・・・放射線への曝露の有無又はそれが健康に及ぼす影響を確認する目的で必要かつ合理的な範囲で検査を受けた場合には、・・・・・・検査費用は賠償すべき損害と認められる。」
  「・・・・・・自らの身体が放射能に曝露したのではないかとの不安感を抱き、その不安感を払拭するために検査を受けることは通常は合理的な行動と言える。」

健康被害は要らぬ心配だが、安心のために検査するのは認めよう。ひどい書き方です。たぶんこれだと、2回、3回と検査を受けるのは「合理的な範囲」ではない、と言われてしまう。

★身体的損害、精神的損害
「生命・身体的損害」の項や「精神的損害」の項には、放射能から避難したにもかかわらず、放射能・放射線の言葉がほとんど出てきません。「精神的損害」の解説では、避難者が「自宅以外での生活を長期間余儀なくされ・・・・・・たために生じた精神的苦痛」という位置づけです。1カ所だけ「放射性物質」の言葉が出てきますが、その文脈はこんな感じ。

→ 「・・・・広範囲にわたり放射性物質が放出され、これに対応した避難指示があったのであるから、・・・・・・・・住民が住居から避難・・・・・・を余儀なくされるなど、日常の平穏な生活が現実に妨害されたことは明らかであり・・・・・・、その生活も過酷・・・・・」

皆さんは読んでどう感じましたか? 私は、放射能による苦痛が『避難生活の過酷さ』の苦痛にすり替えられた、と思いました。

★財産の損害
 「財物価値の喪失または減少」という項があります。住宅や土地もこれに当たります。
・「避難地域にあって財物の価値を喪失または減少させる程度の量の放射性物質に曝露した場合」
・(上記以外で)「平均的・一般的な人の認識を基準として、・・・・・・当該財物の価値の全部又は一部が失われたと認められる場合」

これはどうでしょう。文章だけ見ると、健康被害と違って金額に表れる損害には、国は敏感ですね。だったら「住宅が売れない。売れなくなった家と土地を弁償しろ」というのは避難地域外、福島県外でも現実に起きているのだから、賠償の範囲ももっと広げないと。

【②農林水産物、③風評被害】
②は放射能汚染の程度(今なら100Bq/kg)の問題はさておき、出荷停止だからもちろん損害。③の風評被害も、現実に売れない、儲からない、という実態があるので、国も認めざるを得ないのでしょう。風評被害はわりと積極的に損害として認めています。(でも実際には、東電がなかなか認めません。請求されても金額を値切ろうとして、時間ばかりかけます。)

【④放射線被曝による損害】
 放射能による健康被害は、急性でも晩発性の病気でも、死亡や病気による損害、治療費などは賠償として認められます。これはあたり前。

 問題は、因果関係の認定です。今までに私が目にした福島事故の放射線被曝による損害の実例は、労働者が格納容器内の水たまりに長靴を履かずに足を入れて、汚染水に直接触れた事件だけ。この労働者は、足がやけどのようになって治療を受けたはずです。(他にもあったかもしれないが、今すぐ思い出せません。作業中に被曝した、250ミリSvを超えた、という話は山のようにありますが。)

 原発内で作業中になくなった労働者が数人います。しかしみんな「持病のため」とか「過労のため」とされ、放射線被曝が原因とは見なされていません。

【⑤「自主」避難者の損害】
 さて、一番の問題だと思うのは、「自主」避難者への損害賠償です。ただし「自主」避難と言っても、それは福島県内の地域(1部は除外)の住民に限られます。

→ 「事故は発生当時に・・・・十分な情報がない中で、・・・・・・放射能被曝への恐怖や不安感を抱き、その危険を回避しようとして避難を選択した場合」
  「事故発生からしばらく経過した後、生活圏の空間放射線量や放射線被曝の影響に関する情報がある程度入手できるような状況下で、放射線被曝への恐怖や不安を抱き、その危険を回避しようとして避難を選択した場合」
  「避難をしなかった者が抱き続けたであろう上記の恐怖や不安も無視できない。」
  「住民が放射線被曝への相当程度の恐怖や不安を抱いたことには相当の理由があり、またその危険を回避するために自主的避難を行ったことはやむを得ない面がある。」

 そして自主避難者とその地域に残った人たちの損害は、「精神的苦痛」と「生活費の増加分」。要するに、実害(放射能の健康被害)は出てないが、よくわからないままに避難を選択させたり怖い思いをさせたことには(多少の)責任があるから、損害賠償させる・・・・・。

「自主的避難を行ったことはやむを得ない面がある」という文言には、しなくても良いのに避難した、というニュアンスがまとわりついています。『合理的』とは言いません。

 しかも「健康被害の存在」に基づかない精神的苦痛なので、いつでも打ち切れる。今でも東電は賠償を打ち切ろうとしています。

【全く不十分。でも世論と運動の力が反映している】
 「中間指針」も「追補」も放射能被害(の可能性)を意図的に排除した点で、全く不十分で、その意味で悪質ですが、それでも東電に「自主」避難者やその地域住民への賠償を指示したのは、世論と運動の力のせいです。特に「住民が放射線被曝への相当程度の恐怖や不安を抱いたことには相当の理由があり・・・・・・・」と表現したところに、その力を感じます。

 不安、恐怖から、次は「放射能の健康被害の可能性」とその予防の責任・必要性を認めさせるのが私たちの目標。これは国の原子力政策の根幹に触れる大きな運動になりそうです。
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  1. 2013/02/26(火) 08:27:08|
  2. 事務局長の長いつぶやき
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